ウクライナ情勢が世界の市場に与える影響 



2月末に突如始まったロシアのウクライナへの侵攻。

ウクライナのゼレンスキー大統領を筆頭に、ウクライナ国民には世界中から支持、支援が集まり、平和への祈りが届いている。世界各国が固唾を飲んで情勢を見守る中、今回のこの情勢は、世界の市場にはどのような影響があるのだろうか。


株式市場は長期的には立ち直る見通しだが、当面は影響大

一般的に市場は、長期的には戦争や災害から立ち直るのが普通であり、今回もそうなる可能性が高いと言われている。しかし、ロシアは核兵器を保有しているため、その点を考慮すると非常にリスクを高めていると言えるだろう。


ロシアのプーチン大統領は、すでに世界中の株式、債券、商品市場に大いに揺さぶりをかけている。

米大統領が「侵攻の始まり」と明言した2/22火曜日から、米国株は下落し、S&P500は1%下落、ウォール街でいうところの調整局面(直近の高値から少なくとも10%下落した状態)に陥った。


紛争の激化は、これまで東欧と接点が無く、石油やガス、その他の商品に直接投資したことがない人たちの、何百万もの退職金口座の投資信託や上場ファンドの価値を変えてしまったのだ。

調査会社パンテオン・マクロエコノミクスのユーロ圏チーフエコノミスト、クラウス・ビステセン氏は「市場に対する短期的な影響は比較的単純だ」としながらも「エネルギー価格は上昇し続け、株式は下落し続けるだろう」と述べている。


当面の市場への影響 

原油価格はすでに急騰しており、1年前の1バレル約65ドルから3/8時点では129ドルとなっている。これには、アメリカとイギリスがロシア産の原油輸入禁止を打ち出したことが背景にある。


原油価格はすでに消費者にとっても大きな痛手となっている。米国で最も顕著なインフレの指標であるガソリン代は、AAAによると1ガロン平均3.53ドルである。インフレ率はすでに7.5%に達しており、米国では40年ぶりの高水準となっている。


調査会社キャピタル・エコノミクスのチーフ商品エコノミスト、キャロライン・ベインは、最悪の場合、"石油とガスの価格は簡単に一時的に2倍になり、ガス価格への影響はより長く続く可能性がある "と述べた。


しかし一方で、Capital Economics社をはじめとする多くのアナリストは、これほど深刻な事態は起こり得ないと見ている。シティグループのコモディティ・リサーチのグローバルヘッドで、国際エネルギー政策担当の元国務次官補であるエドワード・L・モース氏は、エネルギー価格が急騰し続けたとしても(主に金融市場での投機が原因)、基本的な需給に基づいてすぐに下落する可能性が高いと指摘する。


モース氏は、ロシアの石油や天然ガスの供給が大幅に、かつ長期的に中断される可能性は低いと述べた。基本的に、ロシアの輸出の流れを断つことは、ロシア、ヨーロッパの消費者、アメリカのいずれにとっても利益にならないからである。


生活への影響の具体的な例

エネルギーコスト

原油価格はすでに2014年以来の高値で、紛争の激化に伴い急騰している。ロシアは世界第3位の原油生産国であり、世界経済が消費する約10バレルのうち1バレルを供給している。


ガスの供給

欧州は天然ガスの40%近くをロシアから調達しており、暖房費の上昇で打撃を受ける可能性が高い。天然ガスの埋蔵量は減少しており、欧州の指導者たちは、ロシアのプーチン大統領が政治的優位を得るために供給量を減らしたと非難している。


食料価格

ロシアは世界最大の小麦供給国であり、ウクライナと合わせて世界総輸出量の4分の1近くを占めている。エジプトやトルコなどの国では、その穀物の流れが小麦の輸入の70%以上を占めている。


必須金属の不足

自動車の排気装置や携帯電話に使用されるパラジウムの価格は、世界最大の輸出国であるロシアが世界市場から切り離されるのではないかという懸念の中で高騰している。同じくロシアの主要輸出品であるニッケルの価格も上昇している。


金融の混乱

世界の銀行は、ロシアの外国資本へのアクセスを制限し、ドルやユーロなど貿易に不可欠な通貨での支払いを処理する能力を制限することを目的とした制裁措置の影響に備えている。銀行はまた、ロシアによる報復的なサイバー攻撃にも警戒している。



今後の展望は未知

今後のロシアウクライナ間の紛争がどのように経済的なダメージを与えるのか、完璧に予想できる人はいない。「最大の危険は、もちろん予期せぬ事態が起こることだ」とモース氏は言う。

またロシアは欧米に対する不満から、すでに中国と部分的に和解しており、これが強力な同盟に発展すれば、欧米の戦略家が何世代にもわたって防ごうとしてきた方向に、世界のパワーバランスがシフトすることになる。


そうなることを防ぐ為にも、またウクライナ大統領とウクライナ国民に心から安心できる日が一日でも早く来るよう、引き続き支援を行っていきたい。


引用・参考

The New York Times:

How the Russia-Ukraine Crisis Is Shaking Markets and Portfolios - The New York Times (nytimes.com)