Shopify Q1 2021 考察~アマゾンキラーと呼ばれるわけ~


テクノロジーの急激な進化によりビジネスモデルが大きく変わってきた。ビジネスモデルを顧客の違いにより区別する「BtoB」や「BtoC」という言葉があり誰しも耳にしたことはあるに違いない。しかし、近年、新たなビジネス形態である「D2C」という言葉が注目されている。

「D2C」とは「Direct to Customer」の略で、製造者が消費者に対して直接商品を販売するビジネスモデルだ。製造者がECサイトの自社チャネルから消費者に直接商品を届けるケースがD2Cモデルにあたる。

D2CモデルでECサイトを展開している企業と言えば、日本国内で言えばAmazonやRakutenを浮かべる人が多いだろう。そんな中、海外ではアマゾンキラーと呼ばれており爆発的な成長を遂げている企業がある。それがShopify(ショッピファイ)だ。



Shopifyは高機能なネットショップが開設できるサービスを提供しており世界175か国、170万以上のネットショップが開設されているカナダ発信の巨大Saas型E-commerceプラットフォーム企業だ。

2021年4月28日、2021年第一四半期の好調な決算が発表された。世界No.1シェアの名の通り、今期の成績は好調だった。好調の要因を考察する前に、ショッピファイの基本的な収益モデルを述べたい。

主な収益源は2つ、サブスクリプション ソリューションとマーチャント ソリューションだ。



サブスクリプション ソリューションは、加盟店がショッピファイのプラットフォームを使用するために支払われる収益で、マーチャント ソリューションは、決済代行や配送等の機能をショッピファイが行うことで得られる収益だ。

いずれのソリューションもインフラコストがかかるが、マーチャント ソリューションは支払いの処理に関連したネットワーク等の追加コストがかかるため、粗利益率はサブスクリプション ソリューションの方が高い。

また、マーチャント ソリューションはトランザクションが発生した後にショッピファイが収益を得られる一方、サブスクリプション ソリューションは、前払い(一部契約除く)でショッピファイが収益を得られる。

高い利益率を誇るサブスクリプション ソリューションから得られる収益を、マーチャントソリューションの分野に投資することで、利益率の改善や収益拡大など良い循環ができている。

では、今期の好調な要因はどこにあるのか考察していきたい。

まずは、実店舗ビジネスから乗り換えた企業が増加したことだ。コロナ禍により営業が困難になった実店舗を持つ企業の需要により大きく成長した。特に、実店舗でのビジネスが中心で、これまでECを行ってこなかった企業(加盟店)が増加した。加盟店増加に伴い、消費者も増加したと言える。

定量的に言えば、今期の総収益は前年同期比110%の約9.9億ドル。内訳は、サブスクリプションソリューションの収益が前年同期比71%増の3.2億ドル、マーチャント・ソリューションズの収益が前年同期比137%増の6.7億ドルだった。月間経常収益 (MRR)は前年同期比62%増の8,990万ドルで、より多くの消費者がプラットフォームにアクセスし収益に貢献したと言える。GMV(取扱高)は前年同期比114%増の373億ドル。決済高(GPV)は前年同期比137%増の173億ドルで、GMV処理の46%を占めた。









次に、他社にはないShopifyの優れた特徴だ。まずは、コスト面だ。従来のECサイト展開方法は、「自社サーバーの用意」「パッケージの導入」などの事前準備に多くリソースを割く必要があった。しかし、Shopifiはサブスクリプションモデルをベースにしていることから、多くの初期費用をかけずに迅速に開発できることが可能だ。また、他社と比較するとサイトの「デザイン性」や「カスタマイズ性」も優れており、あらかじめ用意されているテーマを選択して少し手を加えることで細かな要望に応じることが可能となっている。

2点目は、集客力の強さだ。Shopifyは様々なアプリと連携している。連携可能なアプリは6つだ。Facebook、Instagram、Amazon、Note、Pinterest、Google Shopping。また、ShopifyはSEO対策に莫大なリソースを注いていることで有名な企業だ。まさに、SEO x SNSで強力な集客を行うことができる。



3点目は、在庫管理の簡易さ。ECサイトの運営には不可欠な在庫管理システムも搭載されている。在庫追跡の設定も行うことが可能なうえ、在庫数の調整もできるため、在庫がないのに注文が入ってしまうことを防ぐことができる。サイト運営の手軽さだけではなく、管理運営も楽になるのも世界中で選ばれている理由だ。

最後の特徴は、越境ECの対応がしやすいところだ。一つは豊富な決済方法。消費者からの決済方法は多様化しており、同社では4つの決済方法に対応している。クレジットカード決済、携帯キャリア決済、コンビニ、銀行振り込み、Amazon Pay決済。そしてStripeやPayPalなどの世界対応決済システムの導入可能だ。2つ目は、多言語、多通貨に対応している点だ。同社は、多言語多通貨に対応しているため、海外への発送手配サポートが整っている。各国の税率など細かな設定も行っているため、ストレスフリーにグローバルビジネスができるのも魅力のひとつだ。


2021年度第1四半期の結果は、D2Cビジネスが発展してきた上、新型コロナウイルスの影響によってより加速した。また、他社と異なった独自性あるサービスの提供も大きく貢献したと言えるだろう。しかし2021年には、各国がワクチンを展開し続け、人々がより自由に動くことができるようになるため、経済環境全体が改善され、消費者の行動が変化する可能性が高い。人間は本質的に社会的な生き物であるため、オンラインへの移行は継続する可能性はあるが、消費者は新しい出会いを求めるために店舗を訪問するだろう。EY Future Consumer Index(*1)によると、パンデミック後には、消費者の38%が魅力ある顧客体験を提供する店舗に訪問するという結果が出ている。よって、同社のアフターコロナ戦略が気になるところだ。


*1 Source

Future Consumer Index Cycle 6: How a year of pandemic changed consumersInsights into consumer sentiment surrounding the vaccine onewww.ey.com


[Q1 ハイライト] • 売上高:9.9億ドル(前年比 +110%) サブスクリプション売上高:3.2億ドル(前年比 +71%) 小売業者向けサービス売上高:6.7億ドル(前年比 +137%) • Non-GAAP 粗利:5.7億ドル(前年比 +114%) • Non-GAAP グロスマージン:57%(前年同期:56%) • Non-GAAP 営業利益:2.1億ドル(前年同期:(0.1) 億ドル) • Non-GAAP 営業マージン:21% • Non-GAAP 純利益:2.5億ドル(前年同期:0.2億ドル) • Non-GAAP EPS:2.01ドル(前年同期:0.19ドル) • 営業キャッシュフロー:1.4億ドル(前年同期:(0.8) 億ドル)

[KPI] • MRR(月間平均売上高):8,990万ドル(前年比 +62%) • GMV(取扱高):373億ドル(前年比 +114%) • テイクレート:約2.65% • GPV(決済高):173億ドル(前年比 +137%) • GPV/GMV:46%(前年同期:42%)